手術において患者の精神的、肉体的負担を軽減する ということ

手術において患者の精神的、肉体的負担を軽減する ということは常に医療のあり方の中で目指すことである。しかし近年、インプラント治療においての適応拡大、困難症例を対応するがために手術侵襲の拡大、手術時間の延長といった傾向がある。その結果として麻酔量の増大、高年齢者や基礎新館を有するではさらに患者の負担が大きくなり、必然的にリスクが高くなっている場合がある。患者の不安や恐怖心が強く歯科治療の合併症として、循環器系、心因的要素による様々な合併症問題の報告は多い。術中の患者への麻酔方法を考慮することは安全、確実、そして安心して望むために重要である。

麻酔法の考慮を必要とする患者
1 歯科治療に対する不安感・恐怖心の強い患者
2 いわゆる神経質な患者
3 過去の歯科診療中の不快な体験(脳貧血様発作、神経性ショックなど)のある患者
4 心疾患、高血圧など、歯科診療時のストレスをできるだけ軽減すべき患者
5 歯科診療時に器具の挿入による嘔吐反射が強い患者


麻酔方法としては全身的、局所的な麻酔に分けられる
 局所麻酔法 最小の麻酔で最大の効果が得られる麻酔法を意識する
  麻酔の選択、麻酔法、タイミング、解剖を熟知した上での有効な奏功範囲
術後のペインコントロールとしての麻酔法の考慮、鎮痛剤の内服時期 ブロックの応用

火事になっている家に水をかけるような 麻酔方法は決して避けるべきである。

 全身的な投与 常に局所麻酔との併用であることを忘れてはならない
内服薬による鎮静
笑気鎮静法
静脈鎮静法
全身麻酔法


医療での麻酔法は一般的に 2時間を超えるものは全身麻酔の適応、また手術侵襲が大きいものに関してもその適応という一般的な基準がある。
インプラント手術は、多数埋入、骨移植手術などの処置の場合 時として2時間を超えるものもある。患者の肉体的、精神的負担は増え、局所麻酔量も増加傾向にあり、循環器への負担も懸念される。要するにリスクが高くなる。
こういった場合に治療計画の中に手術を2回に分けるとか、全身麻酔を考えるとかの配慮が必要になってくる。

当院でのクライテリアを示す。
 2時間を超える場合は 手術回数 麻酔法(全身麻酔)を考慮する。
 1時間を超える場合は何らかの鎮静療法を行う。
 たとえ短い処置であっても、処置内容によっては鎮静を行う。
  (骨移植や骨を槌打する処置の場合)
 必ず患者さんと相談して、鎮静療法の希望をお聞きする。

このことを必ず歯科医師、衛生士、スタッフ、患者と相談して決めることにしている。(患者の希望や情報もスタッフから得ることも多々ある)

安全を配慮した麻酔方法ではあるが、その麻酔自体にもリスクがあり、インシデント、アクシデントの報告もある。時々術者が一人で静脈鎮静下にインプラント手術を行っている光景、または話を耳にする。これは絶対に慎むべきであり、危険な行為である。必ず鎮静療法を行う場合には麻酔科医の立ち会いのものと行われるべきである。術者は手術に集中する余り、患者の全身管理が  になる傾向がある。全身管理の教育を受けた優秀な衛生士一人では緊急時に対応ができない。

静脈鎮静下にこれらのリスクは減少できると言われている。しかし個人開業医での手術においても麻酔においても術者、麻酔医は大学病院と個人医院での適応範囲が異なる事も認識して処置にあたるべきである。

緊急時の病院と個人医院の違いをまとめてみた。マンパワー 専門性 緊急性 設備器材薬剤 スタッフ、いずれも緊急時にはそれどれ一つ欠けても充分な対応が困難となる。

個人医院では 緊急時の頻度は稀なため そのいずれも充分な状況とは言えないのが事実である。よって必然的に個人医院での適応範囲も変わってくる。

勇気を持って手術を中止、延期すべきで後日改善した場合には再試行、変化がなければ設備が整っている病院でのオペを考慮する必要がある。インプラント治療のリスクマネージメントとして術中のモニタリングは必要不可欠である。


できるかできないかではなく、安全か否か! が最優先されるべきで 万が一の想定をした上で(想定外でしたでは済まされない)処置、麻酔法の決定がされうるべきである。